年次有給休暇の時季変更権
2013年3月8日
有給休暇は、労働者の指定した時季に与えなければなりません。有給休暇の権利は、労働者が6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤するという条件を満たした場合には、法律上当然に発生する権利であり、労働者が有給休暇の「請求」をしてはじめて生ずるものではありません。そして、前掲「使用者は、(中略)有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない」という規定は、すでに発生している有給休暇の権利について、労働者が個別に具体的時期を特定することであり、これを「時季指定権」といいます。
ただし、労働者から指定された時期に有給休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」には、使用者がほかの時季に変更することができるものとし(使用者の「時季変更権」)、事業運営との調整をはかっています。
「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、個別的、具体的に客観的に判断されるべきもの(昭23.7.27 基収2622号)、とされています。具体的には、当該労働者の所属する事業場を基準として、事業の規模、内容、当該労働者の担当する作業の内容、性質、作業の繁閑、代行者の配置の難易、労働慣行等諸般の事情を考慮して客観的に判断します(大阪高裁判決昭53.1.31此花電報電話局事件)。また、時季変更権を行使した場合には、当該事由消滅した後はできるだけ速やかに有給休暇を与えなければなりません(昭23.7.27 基収2622号)。